裁判報告
第100回口頭弁論
今回意見陳述をされた原告5511番さんは、B型肝炎による強い倦怠感のため、長年にわたり安定した就労が困難であったことをお話くださいました。20代半ば頃から慢性的な倦怠感を自覚するようになり、就職しても体調が悪化して短期間で退職せざるを得ない状況を繰り返してこられました。会社に就職しても、働き始めて間もなく倦怠感が限界に達し、数か月で退職するという悪循環が続き、転職を重ねざるを得なかったといいます。安定した収入や職歴の形成が困難であったことは、生活面のみならず将来設計にも大きな影響を及ぼしたと述べられました。体調が比較的安定した時期に、ある会社で長期間勤務することができましたが、肝がんの発症と度重なる手術・休職により、最終的には退職を決断せざるを得なかったとのことです。再発の不安や長期休職による職場への影響を考慮すると、それ以上就労を継続することは困難であったと述べられました。
仕事と治療の両立困難という事情は、傍聴された方々の胸に響くものがあったようです。ご自身の体験に重ね合わせて聴いてくださった方もいらっしゃったことと思います。
期日後は、報告集会を行い、原告さん同士の交流会も盛り上がりました。初参加の原告5511番さんも、参加させてもらって元気になれたとおっしゃっていました。
第99回口頭弁論
今回の期日では、55歳の息子さんを1年前に肝臓がんで亡くした母親である原告5475番さんの意見陳述がありました。お母さんも高齢のため、息子さんと双子の姉弟(きょうだい)であるお姉さんが法廷で陳述書を代読しました。
息子さんは20代の頃からB型慢性肝炎を発症し、インターフェロン治療をうけましたが治癒しませんでした。そして7年前に肝臓がんを発症し入院し手術をうけるも肝臓がんが再発してしまいました。2年前からは食欲が落ち、記憶が飛んだりするなどの肝性脳症を併発し、最期は自宅で亡くなりました。
お母さんは、陳述の終わりに、
「なぜ息子がB型肝炎に?」とずっと思ってきました。難しいことはわからず、弱い子に産んでしまったと自分を責めても来ました。子の健康を願い受けさせた予防接種が原因で子が生涯にわたって心身ともに苦しみ、若くして死んでしまうことが親にとってどれほどの苦しみであるか。やりたいこともあったでしょう。もっと生きていたかったでしょう。息子の無念を思うと言葉になりません。注射器の連続使用さえなければ、天寿を迎えるまで、もっともっと普通に幸せな人生を歩めたはずです。
と述べています。
陳述書を代読したお姉さんは、担当弁護士に、意見陳述で遺族の気持ちを表明できてよかった、母もそして私自身もつらかったんだと改めて感じたということを話していました。
第98回口頭弁論
今回の期日では、原告5451番さんが意見陳述をしました。
同原告の病態はキャリアですが、HBV感染がわかったとき、担当医からは「ウイルス量は私が過去に診た患者さんの中でも突出して多く、よく肝硬変や肝臓癌を発症しなかったなというレベル」と言われたそうです。
「すぐに核酸アナログ製の服用した方が良い」といわれて服用を始めましたが、数年たってもウイルス量が十分に下がらず、肝疾患を発症するのではないかと鬱々とした日々を過ごされました。
B型肝炎の集団訴訟については当時担当医から聞きましたが、体調を崩している高齢の母に自分のHBV感染を伝えて精神的負担となることが心配だったことや、もっと重い病態の人がいる中でキャリアの自分が手続をとることがためらわれたことからすぐには手続をとらなかったそうです。
ですが、病態が進んで慢性肝炎を発症するなどした場合には追加給付を受けられることや、負担を心配していた母から提訴を勧められたことなどに背中を押され、今回の手続を取るに到ったとのことでした。
今回の意見陳述を通じ、HBV感染者の方には様々な困難があるのだと改めて思いました。
5451番さんは最後に、ご自身がHBV感染を知ったのが50歳になってからだったことなどを踏まえて、国にはB型肝炎検査の奨励及び救済手続の周知に努力してほしいと訴えられていました。
第97回口頭弁論
第97回口頭弁論期日では、慢性肝炎を30年以上にわたって患っている原告4682番さんが、法廷で意見陳述を行いました。4682番さんは、平成3年にB型肝炎ウイルスによって急激に肝機能が悪化する「急性増悪」を発症し、入院しました。一旦、病状は落ち着き、仕事に邁進されていましたが、平成10年に再び肝炎を発症し、多忙な仕事を制限しながら懸命に通院して治療をされました。その甲斐あって症状が落ち着きましたが、平成14年に3度目の肝炎発症となり、平成19年に核酸アナログ製剤の投与が始まるまでの間、有効な治療ができず経過観察を続けざるを得ませんでした。現在、肝臓の数値が落ち着いた状態が続いていますが、肝がん発症のリスクなど不安を抱えたままです。実に34年間に及ぶB型肝炎ウイルスによる被害について、裁判所と国に力強く訴えられました。
担当弁護士からも、福岡高裁において、提訴から20年以上前にB型慢性肝炎を再発した患者(再々発事例)の取扱いについて協議が続けられていることを踏まえ、長く肝炎を患っている患者を切り捨てず、早急に救済策を進められるようにすべきとの意見が述べられました。
口頭弁論期日の後は、弁護士会館に移動して報告集会が行われました。4月10日に、国に対して、再々発事例に関する福岡高裁での協議を早急に進めてほしいと訴える院内集会が開催されたことなどが報告されました。また、報告後は、意見陳述を行った4682番さんも含め、参加原告全員で交流をしました。
第96回口頭弁論
第96回口頭弁論では、原告番号5460番さん(病態はキャリア)が意見陳述をしました。
5460番さんは、B型肝炎の感染が判明した経緯、B型肝炎に感染したことが判明してから、これまでのご自身の活動について意見陳述いただきました。実は、5460番さんは市議会議員を務められていた当時、原告団・弁護団の活動にご尽力いただき、意見陳述では、そのことについてもお話いただきました。
期日の後は、裁判の報告集会が開かれ、5457番さんから感想が述べられました。その後、各班からの活動報告があり、いつものように交流会を実施しました。
報告集会終了後、久しぶりに弁護団と原告団の懇親会を行い、大いに盛り上がりました。
第95回口頭弁論
第95回口頭弁論では、原告番号5457番さんが意見陳述をしました。病態は慢性肝炎で、除斥期間20年が経過する5日前に提訴をされた方です。5457番さんは、目標にしていた仕事に就いたものの、慢性肝炎発症により入院され、その数年後に慢性肝炎が原因で住宅ローンの審査が通らずに自宅購入を断念され、その数年後に身体的負担からやむをえず転職を選択するという経験をされました。その上で、「救済していただくことは、大変ありがたいことですが、国は、感染者からの申請による受け身の救済ではなく、除斥期間を廃止し、積極的に救済の手を差し伸べるべきではないでしょうか。何の罪もない人々が、今も苦しんでいるのです。国には心ある救済を望みます。」との意見を述べられました。
次いで、弁護士からも、B型肝炎訴訟における除斥問題とは、国自らが引き起こした問題であるにもかかわらず、放置をして、救済せずに被害者に被害の存在を気づかせないでいて、その結果時間の経過を利用して責任を逃れようとする国の対応にほかならないと意見陳述を述べました。
期日の後は、中之島公会堂で裁判の報告集会が開催され、5457番さんから感想が述べられ、いつものようにこの間の活動が共有され、除斥問題の活動や広報活動、教育啓発活動について報告された後に、原告さん・元原告さんの皆さんとの交流会が開催されました。