裁判報告
第34回口頭弁論
当日は、193名という大人数の原告が和解されました。
法廷では、原告1328番の方と、原告2437番の方が、それぞれ意見陳述を行いました。原告1328番の方は、慢性肝炎発症の苦しみ、治療と仕事との両立の辛さや大変さなどを語られました。原告2437番の方は、ご主人を肝ガンで亡くされた遺族原告であり、ご主人の肝ガン再発の苦しみや、治療の大変さ、ご主人が亡くなられたときの思いなどを切々と語られました。
口頭弁論終了後は、中之島中央公会堂に移動し、報告集会を行いました。
意見陳述をされた2名の原告と、担当弁護士から一言ずつ感想を述べた後に、原告団・弁護団の活動紹介や報告を行いました。
まず教育啓発チームの勝俣弁護士より、B型肝炎という病気を広く知ってもらうための啓発活動に関する報告や、医療系学生などを対象とする患者講義の内容を説明しました。
次に、真相究明チームの西澤弁護士より、B型肝炎ウイルスが蔓延した原因を究明し再発を防止するための活動について、パワーポイントを使った報告を行いました。
また、この日は、大阪原告団・弁護団が主催した「オール関西肝炎サポート大集会」(2014年11月16日開催)の報告を行いました。
大集会の様子がニュースで報道されたため、そのニュース番組を紹介し、大集会で放映した、肝ガン患者の座談会映像を見ていただきました。
この「オール関西肝炎サポート大集会」は、すべてのウイルス性肝硬変・肝ガン患者の医療費助成制度創設を実現するために開催した大集会であり、集会の様子を見て下さった原告・支援者には、制度実現のためにさらに結束していく必要性を感じていただけたものと思います。
最後に、参加された原告・支援者・弁護団で交流会を行い、患者同士や弁護士との交流を深めていただきました。
第33回口頭弁論
当日の期日において、157人の患者(原告数166人)について、和解が成立致しました。
原告の意見陳述は、2159番さんと2042番さんがなされました。
2159番さんは、20年にも及ぶ肝がんとの闘病生活について、自らの思いを込めてお話されました。B型肝炎感染の告知によるショック、肝がん発症の影響、家族の支えによりこれまで何とかやってこられたことについて、心を込めてお話されました。また、除斥制度の不合理な点についてもお話されました。
2042番さんは、慢性肝炎発症からの30年にも及ぶ闘病生活の苦しみ、医師の指示に基づき1週間に2度の栄養注射を6年間も打ち続けたこと、感染者にしかわからない疎外感、肝がんの発症および8時間にも及ぶ手術などの苦しみを話され、原告共通の願いとして、早期和解が望みであることを話されました。
弁護団意見陳述では、井上洋子弁護士が、国による和解資料審査の遅れにつき、事例を挙げて具体的に述べ、早期の改善を促しました。また、除斥期間の起算点の考え方につき、B型肝炎訴訟特有の特殊事情に鑑みて、除斥が適用されるケースを厳密に考えるべきであると述べました。
期日後報告集会においては、全国ニュースで取り上げられた映像を紹介し、熱心に取り組んでくださるマスコミの方々によるお気持ちをお話しいただきました。また、原告及び弁護士から、本年8月1日に実施された大臣協議についても報告され、原告及び弁護士の間で、肝硬変・肝がん患者の医療費助成の実現に向けて行動するタイミングは、まさに今であると、認識を共有いたしました。
第32回口頭弁論
今回の期日では、116名の方が和解され、原告の意見陳述と弁護団意見陳述がありました。
原告の意見陳述では、2206番と2346番さんとがお話しされています。
2206番さんは、感染が判明した後も仕事を頑張ってきたこと、精神的にしんどくなり会社を休職したこと、B型肝炎に理解のない歯科医院で嫌な思いをしたこと、今は小康状態にあるが今後いつ悪化するかわからない不安な毎日を送っていることなどをお話しいただき、国に対して差別偏見をなくす取組を推進させるとともに、肝炎研究と医療費補助を充実させるよう求められました。
2346番さんは、感染判明後、子供とのスキンシップもぎこちなくなってしまったこと、会社ぐるみで献血運動に協力する際に肩身の狭い思いをしたこと、慢性肝炎発症後の倦怠感や脱力感、感染と治療により仕事も家族サービスを思い切りできない自分へのいら立ち、肝臓がん手術の苦しみ、再発の恐怖についてお話いただきました。国に対しては、積極的に救済対象者を掘りおこし、核酸アナログ製剤治療の肝炎治療受給者証の更新手続を毎年申請しなくとも済むような制度作りを求められました。
続いて、長野弁護団長が「個別救済の現状」、「再発肝がんの除斥問題」、「慢性肝炎等の除斥の指摘問題」について弁護団意見陳述をしました。
「個別救済の現状」では、提訴者数が全国で11861人となったが集団予防接種による感染被害者総数(厚労省の推計では40万人以上)からすると2%台に過ぎない現状を指摘するとともに、既に和解資料を提出した原告について国側からの回答の迅速化を求めました。
「再発肝がんの除斥問題」では、札幌地裁の裁判長が、再発肝がんのうち「多中心性の再発肝がん」(いわゆる肝内転移でないもの)について、再発時を除斥の起算点とする考えに基づき和解に応じるよう国に求めた点について、これまで大阪地裁でも原告らが強く指摘してきた内容でもあり、国に対して速やかにこの指摘を受け入れるように促しました。
「慢性肝炎等の除斥の指摘」では、除斥の適用があることの立証責任は国が負うのであるから、除斥の指摘は厳密・厳格な立証ができる場合に限り、安易な除斥の指摘は控えるように求めました。
裁判の後に開かれた期日報告集会は中之島中央公会堂で行われ、意見陳述をしていただいた2346番さん、2206番さんから意見陳述の感想や、法廷では語りきれなかったお話をお聞きすることができました。また、原告の方から、3周年記念集会の報告や被害実態調査への協力依頼がなされた後、長野弁護団長からこれまでの請願署名活動の報告と今後についての説明がありました。
第31回口頭弁論
当日の期日前に、肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成を求める100万人請願の署名活動を行いました。原告と弁護士合わせて約30名の参加があり、134筆の署名を頂きました。
期日では、原告120名(患者数117名)の方が和解されました。
原告の意見陳述では、1621番さんと2056番さんがお話しされました。
1621番さんは、B型肝炎に感染していることが判明してから、日常生活が大きく変化したこと、また医師から肝がんを宣告され、人と会うことや家族との時間を避け、肝がんが原告1621番さんの性格を変えてしまったことをお話し頂きました。
2056番さんは、慢性肝炎から肝硬変に病態が進行したときのお気持ち、B型肝炎ウイルスに感染していることによって感じる社会に対する疎外感を具体的にお話し頂きました。
また、両原告とも、ウイルス性の肝硬変や肝がんの患者に対して、もっと医療費を助成して頂きたいと述べました。
弁護団意見陳述では、長野弁護団長が「個別救済の現状」、「恒久対策実現に向けての現状」、「肝がん除斥問題」について述べました。
「個別救済の現状」では、提訴被害者は、被害者総数の約2.5%に過ぎず、国に対して、本救済制度の周知方法を徹底すること、国の和解資料の検討・回答が長期化していることを指摘し、真摯な対応を求めました。
「恒久対策実現に向けての現状」では、国に対して、肝硬変・肝がん患者に対する医療費助成の必要性と制度実現を求めました。
「肝がん除斥問題」では、基本合意において確認された国の重大な責任と被害者救済の理念に基づき、再発肝がんの起算点に関する従前の国の主張にとらわれることなく、改めて真摯に検討のうえ、回答することを求めました。
期日報告集会では、大阪肝臓友の会事務局長である西村氏による講演会(演題:「肝臓病と患者会活動」)、4月22日、5月20日の国会行動の報告、署名活動の成果報告が行われました。
第30回口頭弁論
当日は、肝硬変肝がん患者の療養支援の推進を求める100万人請願活動として、期日前に署名活動が行われました。30名程の方の参加があり、159筆の方に署名を頂きました。
期日では、原告112名(患者数97名)の方が和解されました。
原告の意見陳述では、肝がん発症されている1239番さんが、差別偏見を恐れて、職場の人のみならず両親や兄弟、妻にまで感染の事実を伝えることができず、子どもを授かったことすら罪悪感でいっぱいになったこと、家庭の中で感染を拡大させないために細心の注意を払って妻や子と接してきたことなど、これまでの生活での心の負担、苦しみついて話してくださいました。
普段は穏やかな方ですが、自身が肝がんを発症した際の絶望や恐怖、家族に心配をかけ続けることへの無念の想い、国の責任で感染したことに対する悔しさなども感情をこめて陳述してくださいました。
その後、キャリアの2138番さんが、キャリアであることがわかり、将来について常に漠然とした不安を抱えていること、10年後に生きていないかもしれないと思うと、人生で頑張りきれないこと、あきらめないといけないことがあり、悔しい思いをしてきたことなどを話して下さいました。
そして、ウイルスを排除する治療法の確立を望むこと、国には、肝炎患者をはじめハンディを抱える方が、負い目を持たずに生きて行ける社会を作ることを望むことなども陳述してくださいました。
弁護団意見陳述では、西澤弁護士が『真相究明と再発防止について』述べました。
集団予防接種等によるB型肝炎感染拡大の検証及び再発防止に関する検討会(検証会議)の報告書の内容をわかりやすく報告し、その上で、最高裁判所判決で責任が認められた後も救済措置をとらずにきた国に対して、B型肝炎感染拡大の原因と国の負う責任について、国民に対して周知することと、感染被害者が不当な偏見・差別を受けることなく安心して暮らせるよう啓発・広報・恒久対策を充実することを改めて求めました。
そして、本件訴訟についても、患者救済のために早期和解を実現するよう、和解資料確認等作業の一層の促進をし、形式的な資料提出要請をしないようにすることを求めました。
その後の期日報告集会では、3月12日の国会要請、1000人集会の報告が行われ、原告さん同士交流を深められました。
第29回口頭弁論
新たに164名の原告の方の和解が成立しました。この日も、いつもどおり、傍聴席は満席で、多くの方のB型肝炎訴訟に対する関心の高さがうかがえました。
意見陳述では、お2人の原告が意見を述べられました。
原告1831番の方は、61歳の男性で、肝がんで幾度となく入退院と手術を繰り返しておられます。闘病生活の苦しみやご自身の病気が家族に与えてしまった悲しみ、社会復帰への不安について、静かにお話頂きました。一度はチャイルドピュー分類のCという重篤な状態にまで陥りながら、今も何とか生きていることが奇跡であり、今更じたばたしても仕方がないと思っておられたそうです。一方で、今は、もうすぐ生まれる初孫の笑顔を見るために頑張っていると前向きな気持ちも語られました。
原告553番の方は、49歳の男性で、慢性肝炎の治療中です。治療のため、前の会社を辞めることを余儀なくされ、今の会社では騙し騙し病気と付き合いながら、生活のために必死で働いてこられました。慢性肝炎と診断された当時、B型肝炎に関する世間一般の誤った認識のため、当時の婚約者と破局し、婚約者のお腹にいた4か月の子供を諦めざるをえなかったという辛い過去を打ち明けられ、ご両親や現在の婚約者との関係でも葛藤を抱えていることを涙ながらにお話されました。
弁護団の意見陳述では、40万人以上いると推計されている被害者全員の早期の救済のため、国はさらなる根本的な周知徹底を図るべきであること、無意味な資料の提出要求をやめるべきであること、さらに、肝がんが再発した場合に除斥制度を不適用とすべきことが述べられました。